気象衛星が故障した、というようなことらしく、今日のニュースコーナーでもその話題が出ていた。

 今はまだ夏だから良いけれど、冬に天気予報が出ないのは困るな、などとぼんやり考えながらお味噌汁を作る。掌の上で豆腐を切り、ざるに開けておいたなめこを入れる。うん、今日も良い味になったと自画自賛する。

 目玉焼きを作りながらもう一度テレビに目を移すと、今度は芸能人の離婚のニュースが流れていた。いつもの日常だった。

 まだ寝ているおばあちゃんを起こさないように、そっと家を出る。

 そして建物の裏側にあるいつもの待ち合わせの場所に向かって、私は歩く。

 この市営住宅は、小高い丘の上に五棟並んで立っていて、私が住んでいるのは一号棟。すぐ隣の二号棟に、隣のクラスで私がおばあちゃんの家に引き取られて以来、ずっと仲良しの一花(いちか)が住んでいる。

 一花の姿が二号棟の入り口から見えたので、大きく手を振った。一花もそれに応えて、手を振りながらこちらへ駆けてきた。

「おはよう。今日は遅かったね」

「おはよ。それがさ、スマホの調子が悪いんだよね。色々いじってるうちに時間になっちゃって」

 遅れてごめんとぺこりと頭を下げた一花のポニーテールが、ぴょんと跳ねた。