いつもの時間に、電話のベルが鳴った。

 何から話し始めようか、なんて考えていたことも忘れて、私は慌てて受話器を取った。


「もしもしっ!」

 結局、第一声はいつもと同じだ。

『ふふふ。元気そうだね』

「もちろん! そうだ、優理君、一日遅れたけどハッピーハロウィン!」

『……ああ、忘れてた。そういえば昨日がハロウィンだったっけ』

「それどころじゃなかったけどね」

『いや、もしかしたらハロウィンの夜だから、あんなことが起こったのかも知れない。「デビルズナイト」だからね』

「それ、初めて聞いたかも」

『ハロウィン前の三日間、デトロイトでは仮装を楽しむ「デビルズナイト」っていうのがあるらしいんだけど、この時期に放火や誘拐が激増したっていう話だよ』

「なるほど。そういえば、日本でもハロウィンの夜、毎年のように若い人が暴れてニュースになるよね。成人式もだけど、どうして昔から晴れ着や仮装をすると暴れる人がいるんだろう」