一花は「もうすぐ夕飯の時間だから」と言って、一時間程度で帰ってしまった。
前回会った時は、先の見えない不安でいっぱいだった私達だけれど、今は違う。
これから先は、必ず良いことが起こるという希望がある。
それと、私は意外と強いのではないだろうかという、自信が生まれた。
自分はずっと弱い立場にいると思っていた。
お金がないこと、スマホがないこと、何より、親からの愛情を受けて育っていないこと。
これが生きていく上で、途方もないハンディキャップだと信じて疑わなかった。
事実、友達と放課後遊びに行くこともなく、洋服だって最低限のものしか買えない。
憐みの目で見られることはあっても、一度も羨ましいと思われたことはない。
だけど、今はどうだろう。
普通の生活が送れない状況で、私の考え方は少しずつ変わってきた。
たとえ車があってもガソリンがない、便利な電化製品があっても停電で使えない、スマホもGPSも電波が使えない、という環境に置かれた時、私は不自由だと思わずに済んだ。