「お蔭様でかなり良くなったよ。退院して今は家で元気に大暴れ。少しずつリハビリもしてるんだ」
「良かった~。心配したんだからね。やっぱり、いいこともあるっしょ?」
「うん。ミサイル飛んでこなくてホント良かったよぉ」
八月のあの日、泣きながら不安を訴え、いっそのこと今すぐ核弾頭が飛んでくれば、自分の死後、弟のことを気にしなくても済むと言っていた一花。
言葉を振り絞って、必死に慰めたことを思い出した。
「ところで、綺羅は守屋君とどうなのさ?」
あ、やっぱり聞かれた。
「どうって……電話はしてるよ」
「もしかして、毎日?」
「毎日、ではないけれど、まあ割と」
実のお父さんと現在のご両親が話し合うため、病院に泊まり込んでいた四日間を除いて毎日、だけど。
ちょっと照れ臭いので微妙にごまかしてみる。
「そんなに話すネタあるの?」
「あるよ。勉強の話。お陰様で宿題はあっという間に終わったし、教科書ももうすぐ全部終わるところ」
勉強以外の話の方がもちろん多いけれど、それにも触れないでおこう。
