まず、船で中国へ渡るまでの間、韓国と北朝鮮の領海を通らなくてはならないため、両国を中国がしっかりけん制してくれるという。

 中国国内へ入ってからは、中国の国家主席と共に中国とロシアの鉄道を使い、中国側のSPも加えた警備態勢で、ヨーロッパまで行けるようになったとのこと。

 このような共産圏寄りのルートも、中国側からのお詫びという形で受けているため、同盟国のアメリカにも角が立たずに済む。

 これでようやく、世界規模のピンチを乗り越えるための話し合いに参加できることになったという久々の明るいニュースに、キャスターも興奮したまま解説している。

 もう窓を開けても大丈夫だ、突然ミサイルが飛んでくるようなことはないだろう、おそらく首脳会談が成功すれば子ども達の外出禁止も解除されるだろう、ということを繰り返し伝えていた。


 私とおばあちゃんはすぐに脱衣所から出て、床に敷いていたお布団をベランダに干し、久々に外の空気をたっぷり吸いこんだ。

 空気はいつの間にか冬の匂いに変わっていた。