梗概
【物語の時代は現代~近未来の頃。物語の舞台は先進的な科学技術機構が所在している、とある国。

軌道エレベーターの国際開発機関「ISEDO」のスタッフである、若き科学者のウィリアム・ロックワード。彼にはやはり科学者である父親がいたのだが、何者かによって殺された、という過去があった。それも自身の目の前で。だが、その記憶はおぼろげ。
それ以後、ウィリアムは父親を亡くし母親と二人きりになったものの、その二人を父親と母親の友人であり、同輩の科学者のモリス・トンプソンが影ながら支えるようになる。母とモリスはいつしか結婚するのだろう、とウィリアムが子供心に描くぐらい二人は仲睦まじく見えた。だが、ついに連れ添う事なく、母は病死してしまう。
そして、母親の死後、科学者となったウィリアムはISEDOでモリスとともに軌道エレベーターの開発に勤しむようになった。
しかし、そのモリスがある日突然姿を消す。ウィリアムに「私は私自身との約束を果たす時がきた……」という謎の書置きを残して。
周囲では他国による独自の軌道エレベーター開発技術において、モリスの頭脳を借りるため何処かの国のスパイだか誰かが、モリスを誘拐もしくは拉致した、と騒ぎ始める。だが、モリスの足取りも掴めないまま時間は過ぎる。あまりに音沙汰がないので、もしやモリスの方が情報を売ったのではないか? という疑惑がいつしか持ち上がり、ISEDOでは不穏な空気が流れ始める。
またその頃からどうしてか、ウィリアムは父親が殺された過去の場面を、夢で何度も見るようになる。
さらにウィリアムは奇妙な噂を耳にする。モリスは失踪する前まで「温度差による時空の変化」という独自の理論をもってタイム・トラベルの研究を行っていた、と。
幾つものモリスに関わる情報にウィリアムは困惑しながら、一方でウィリアムは何度も見る殺害の夢の中で記憶が蘇り始める。父親殺害の当時、その瞬間、ウィリアムはショックのあまり気を失った。その寸前に近づいてきた犯人がウィリアムに告げた台詞。それをウィリアムは思い出す。
『私は私自身との約束を果たす時がきた……』という一言を】