「うふふ、結構待ってくれてたんだね」

幻聴とは違う、美希さんのリアルな声。女性特有の高い声が、僕の耳に聞こえた。

「スタッフさんから一時間ぐらい待ってくれているお客さんがいると聞いていたんだけど、まさか栗原さんなんて。正直、驚きましたよ。でも、待たさせてすみま……」

「えっ!」

彼女の謝罪の言葉を聞く前に、僕は美希さんを軽く押し倒した。ほんの軽い力で。それでも美希さんは後方に倒れ、そのままベッドに仰向けの状態で倒れた。僕はそのまま、美希さんにおおい被さるようにして倒れた。彼女の心音が、間近で聞こえる。彼女の体温を感じる。

「ご、ごめん。美希さん………」

我に返った僕は、慌てて美希さんから離れようとした。

「また、来てくれたんですね。ありがとう」

その前におだやかな声で彼女にそう言われて、僕は美希さんに腕をつかまれた。そして、頬を優しく触られた。

ーーーーーードクッ。

僕の心臓がドキドキする。