「先に、料金の支払いをお願いします」

「はい」

昨晩、僕は父親のサイフからこっそり盗んだお金を目の前にいる松岡店長に手渡した。一万五千円が、水のように消えた。

「ありがとうございます。では、ごゆっくりお待ちください」

そう言って松岡店長は、待合室から出た。

「今頃美希さんは、僕以外の人と………」

嫌な妄想が、僕の頭の中に勝手に膨らむ。一秒が、一分のようにとても長く感じる。まるで、つまらない授業のようだ。

「まだか」と思って腕時計に視線を落として確認して見たが、まだあれから数分しか経過していなかった。

ーーーーーー会いたい感情が募る。



ーーーーーー1時間後ーーーーーー。

「お客様。どうぞ、長らくお待たせいたしました」

あれから一時間経過した後、松岡店長が笑みを浮かべて申し訳なさそうな様子で僕に言った。

「………」

僕は座っていた黒色のソファーから立ち上がって、美希さんが待機している個室へと案内された。ドアを開けると、そこには彼女の姿が見えた。