この木屋町通りは、コンビニや飲食店が早朝から深夜まで営業しているところが多い。もちろん、美希さんが働いている店も早朝から深夜まで営業している。

「……」

僕は屋根付きの喫煙所の細い路地を歩いて入ったところにある、美希さんが働いている店に向かった。

「入れますか?」

「どうぞ」

この前と同じように、僕は店の中へと案内された。待合室に案内され、ソファーに腰掛けた。この前と違って、今日は待合室には誰もいなかった。

「誰か、ご指名しますか?」

店長の松岡さんが、作り上げた笑顔で年下の僕に敬語で接客する。

「佐藤……利恵さんで……」

僕は、緊張した声で答えた。

「すいません。彼女は、一時間待ちになります」

「一時間………」

店長の松岡さんにそう言われて、僕はハンマーで頭を叩かれたような痛い気持ちになった。逃げていた嫌な現実を突き付けられた気分。