『4月28日《月》午後4時10分』

終礼のチャイムが、学校全体に鳴り響く。

「みんな、気をつけて帰ってくださいね」

担任の佐藤先生が心配そうにそう言うと、生徒たちは教室から出て行く。

「美希、一緒に帰ろう」

となりのクラスの工藤友梨が、僕たちのクラスに入ってきて美希に声をかけた。

「ごめん、友梨。今日は無理」

「またぁ」

美希が胸の前で手を合わせて謝った姿を見て、友梨が呆れた表情を浮かべた。

「それに今日は無理じゃなく、今日も無理でしょ。美希」

友梨がどうでもいいことを指摘して、美希さんの胸のあたりを指差した。

「ははは、そうだね」

美希は否定することなく、小さく笑った。

ーーーーーー美希さんは、今日も仕事なのだ。友人と一緒に帰ることを我慢し、好きな人と一緒に帰ることを我慢してこの仕事をしている。

ーーーーーーなんのために?

そう考えると、僕の顔は自然と心配そうになる。