『私も、会いたい』
そのとき、美希さんの幻聴が聞こえた。
『父親にひどいことを言われてきたんだから、お金を盗んでもなにも問題ないよ』
「………」
『この家族の居心地が、嫌なんでしょ。私に、会いたのでしょ。私といる時間の方が、幸せなんでしょ。それなら、お金を盗んで私に会いに来て。少しぐらい盗んでも、バレないから』
ーーーーーー少しぐらいお金を盗んでも、バレないだろう。それに、美希さんのためならこれぐらい仕方がないことだ。
気づいたら、僕は黒革のビジネスバックをつかんでいた。チャックを恐る恐る両手で開けて、カバンの中身を確認した。ビジネスバックの中身は、メガネケースと新聞紙。それと、メンズの長財布が入っていた。
「………」
初めて父親の財布を間近で見て、僕は少し緊張した表情になった。
僕の使用している安物の二つ折りのサイフとは比べ物にならないぐらい、おしゃれで高級そうなサイフだ。
そのとき、美希さんの幻聴が聞こえた。
『父親にひどいことを言われてきたんだから、お金を盗んでもなにも問題ないよ』
「………」
『この家族の居心地が、嫌なんでしょ。私に、会いたのでしょ。私といる時間の方が、幸せなんでしょ。それなら、お金を盗んで私に会いに来て。少しぐらい盗んでも、バレないから』
ーーーーーー少しぐらいお金を盗んでも、バレないだろう。それに、美希さんのためならこれぐらい仕方がないことだ。
気づいたら、僕は黒革のビジネスバックをつかんでいた。チャックを恐る恐る両手で開けて、カバンの中身を確認した。ビジネスバックの中身は、メガネケースと新聞紙。それと、メンズの長財布が入っていた。
「………」
初めて父親の財布を間近で見て、僕は少し緊張した表情になった。
僕の使用している安物の二つ折りのサイフとは比べ物にならないぐらい、おしゃれで高級そうなサイフだ。