「美希さん………」

彼女に会いたい感情が募る。でも、会うためにはお金がいる。

美希さんのことが好きになっていくのと同時に、それと比例して僕の心の中に眠っている黒い感情も激しくなる。

父親が毎日会社に持って行っている、黒革のビジネスバック。父親はもちろん、誰もいないフローリングの床に黒革のビジネスバックが置かれていた。僕は、それに視線を落とす。

ーーーーーー父親のお金を盗めば、また美希さんとお店でも会える。そして、ゆっくり楽しいお話もできる。

そう思うと、僕の頭ので美希さんの全てがよみがえる。

悲しそうに笑う顔。澄んだ声。真っ白な雪のような肌。

「会いたい」
彼女に会いたい想いがピークに達したのか、僕はまた同じ言葉を口にした。