「美希さん………」

僕は、美希さんと裕也の恋愛を阻害する、大きな壁のような存在で複雑だった。美希さんと席の近くになれたのは嬉しいことだが、それと同時に僕の前に彼女の好きな人がいる。そう思うと、複雑な気持ちになる。

これだけがんばっている美希さんには幸せになってほしい気持ちと、この恋愛に失敗して僕に振り向いてほしいという気持ち。この二つの気持ちが、ぶつかり合う。

午前中と同じように、幼馴染の三人は昼休みも楽しそうに話していた。

美希さん。裕也。そして、となりのクラスの友梨。

僕は自分の席から離れて、右手にiPadを持って教室の隅に歩いて移動した。遠くから美希さんを見たら、やはり楽しそうだ。

「………」

美希さんが僕に接する態度は冷たくはなっていないが、友梨と裕也と話しているときの方が楽しそうに見える。しかも、裕也と話しているときの美希さんの顔は、すごく楽しそう。

「はぁ」

僕はため息をついて、iPadから美希さんが勤務している風俗店を調べた。キーボードで文字入力をし、検索をタッチする。液晶画面に店の公式サイトが映り、僕はそれをタッチした。ぼかした女性の顔写真が掲載されており、その下の画面の出勤情報をタッチした。美希さんの出勤情報を目で確認すると、今日も出勤することがわかった。