「うん」

コクリとうなずいて、僕はテレビ画面に映っている好きな女性アナウンサーから視線をはずした。そして、今日の朝食を食べ始めた。

普段ならおいしいと感じられるトーストも、今朝はおいしく感じられなかった。

「未来。学校の制服、この白いソファーの上に置いとくからね」

「うん、わかった」

母親が高校の制服を準備してくれるのを見て、僕は短く返事した。

小学生のときから、母親の手をわずらわしている。やさしい母親に感謝していると同時に、自分の将来に不安が募る。

僕は朝食を食べ終えた後、高校の制服に着替え始めた。着ていたパジャマを脱ぎ捨て、汚れひとつない新品の真っ白なカッターシャツに着替えた。緑色のネクタイをヘタクソに結び、学校の指定された黒色のズボンを履く。パジャマから高校の制服に着替えると、一気に体と心がずしりと重たくなるのがわかる。

ーーーーーー家にいてずっと、僕の好きな女性アナウンサーを見ていたいなぁ。

そんなことを思っていると、「テレビばっかり見てんと、着替えたら早く学校に行けよ」と、朝から口うるさい父親がまた僕を怒鳴った。