「でも、制服のまま入ったらバレるでしょ。法律で年齢的にこういう仕事は禁止されてるし、見つかったら美希さんの方が僕よりもヤバくない?」

僕は、心配そうな表情を浮かべて美希さんに訊いた。

「ははは、それはだいじょうぶですよ。学校に、私服を持ってきてるんです。制服から私服に着替えてから、店に入るんです。それに、本名では働いていませんから」

「えっ?」

微笑みながら答える美希さんの顔を見て、僕は細い首をわずかに傾けた。

「どういうこと?」

僕は、眉間にしわを寄せて彼女に訊いた。

「私、本名は佐伯美希なんですけど、ここでの名前は、佐藤利恵で働いているんです。出席のとき返事が遅れたのは、本名と仕事上での名前がごっちゃになったからです」

ーーーーーーどうやら、そうらしい。

「お店のホームページにも載っていますが、もちろん本名は使っていません。写真もかなりぼかしたのを載せていますし、学校にバレることはまずないと思います。高校生で働けたのは面接のとき、年齢をごまかしたからです。スマートフォンからでも見れると思いますが、お店のホームページに私の年齢は、十八歳と表示されています」

美希さんは笑顔を見せながら、そんな大切な個人情報を僕に説明した。

美希さんの笑顔が、いつも悲しそうに見える。笑っているのに、泣いているように見える。それが、辛い。