「………」

美希さんも白い頬を赤くしており、思考が停止しているように感じた。

「す、すいません」

開いた口から、なぜか謝罪の言葉が出て僕は帰ろうとした。

「どうして?」

しかし、美希さんが僕の腕をつかみ、潤んだ瞳でこっちを見つめた。

ーーーーーードクッ。

また、僕の心臓の鼓動が速くなる。

「え、でも………」

戸惑った様子で、僕は視線をあちこちに泳がす。

少し狭い個室に、ベッドとシャワーが設置されている。窮屈というほど狭くはないが、美希さんと二人だけの空間に僕の心臓が激しくなる。

「せっかくこんなところで会ったのだから、少しお話でもしよ」

「え!」

少し頬を赤くした彼女にいきなりそんなことを言われて、僕は目を丸くして驚いた。

「じゃ、そうするよ」

「ふふふ、ありがとう。栗原さん」

僕がそう答えたのがよかったのか、美希さんは笑みを浮かべた。

もうすでに美希さんの顔は赤くなく、バス停まで一緒に帰ったあのときのような顔をしていた。