「お客様、どうぞ」

あれから十分ぐらい待って、ようやく僕が呼ばれた。店長の松岡は接客業特有の笑みを浮かべながら、ていねいな態度で僕に応対する。

「待合室を出て、階段をのぼってください」

松岡店長にそう指示を受けた僕は、待合室を出て言われたとおり階段をのぼった。そして、一番手前の扉を開いて中に入った。

「栗原………さん?」

扉を開けて中に入ったのと同時に、聞き覚えのある女性の声が僕の耳に聞こえた。とても澄んだ、きれいな声。

僕の視界中央に見覚えのある女性が驚いた顔をして立っており、白いブラウスと黒いミニスカートの服装をした彼女が僕を見つめている。

「美希さん………」

ーーーーーードクッ。

その名前を口にしただけで、僕の心臓の鼓動が激しくなる。頬がぽっと赤くなり、思考が停止する。

ーーーーーーなんで、美希さんがこんなところにいるの?学校は………?

頭の中が混乱し、僕は呆然と目の前の美希さんを見た。それと同時に、美希さんと目が合う。