「一時間のコースで、お願いします」

「ありがとうございます。一万五千円になります」

松岡店長にそう言われて、僕はサイフから一万五千円を取り出した。そしてそれを、店長の松岡さんに渡した。

「ありがとうございます。時間になったら、お呼びします」

そう言って松岡さんは頭をペコっと下げ、カーテンの外に出た。

ーーーーーーどうやら、この部屋は待合室らしい。僕より先に来てる二人を交互に見ると、そんな感じがする。

「ふぅ」

口から深い息を吐いて、僕は白い壁にもたれた。

待合室にあるものは、少しリッチに思えた。

小さな書棚に、雑誌が数冊置かれていた。ガラステーブルの上には、ステンレス製の灰皿が置かれている。灰皿の中身は、タバコの吸い殻が三本ほどあった。それと、気が利くことに自動販売機が設置されている。

ーーーーーーサービスいいなぁ。

僕は狭い待合室を見回して、そう思った。

真ん中に座っている三十代ぐらいのメガネをかけた男性客が、ポケットからタバコを取り出してライターに火をつけて吸い始めた。タバコの先端部分がゆらゆらと煙が漂い、狭い待合室にタバコの匂いが広がる。スーツを着た太めの年配男性客に目をやると、スマートフォンを操作しながら待っていた。