「どうですか？」

「……入ります」

やさしい口調で若い男性従業員にもう一度訊ねられて、僕はボソッと小さな声でそう答えた。

「どうぞ」

ていねいに案内された僕は、若い男性従業員の後ろについて歩く。

店の中は清潔に掃除されており、白い廊下がきれいだった。店内の照明は明るく、事務の仕事だと思われる男性従業員がパソコンの画面を見つめていた。

「こちらへ」

僕より少し前を歩いていた若い男性従業員が、黒色のカーテンをていねいに右手で開けた。そして開けてくれたカーテンの中に、僕は入った。

黒色のカーテンの中には、男性客が二人黒いソファーに座っていた。スーツを着た太めの年配男性客と、三十代ぐらいのラフな服装をしたメガネをかけた男性客。

「………」

僕は緊張した表情を浮かべながら、黒いソファーの右端に座った。

僕のとなりに座っているのが三十代ぐらいのメガネをかけた男性で、そのとなりにスーツを着た太めの年配の男性客が座っている。