「今だけ、特別価格ですよ。どうですか?」

なにが特別価格なのかはわからないが、中年男性はまるで通販番組のように言って僕を誘い入れようとする。

「………」

あたりを確認すると、違う男性従業員が同じような手口で他の客を呼び込んでいた。その呼び込みにうまく乗せられて、男性客が店へと足を踏み入れる姿が見えた。

「どうですか?」

「いえ、けっこうです」

手をパタパタと振りながら断った僕は、その場から早足で離れた。




あの店から少し離れてから数分後、僕はまだこの周辺の細い路地を歩いていた。歩いていると、おしゃれな外観が目に入った。さっきの店とは違って高級感が外観から感じ、立っている男性従業員も若そうに見えた。

「どうぞ」

僕と目が合って、若い男性従業員がそう言った。

「………」

僕はちらりと、お店に視線を移した。お店の料金は書いておらず、店名だけ大きく書かれていた。

ーーーーーーちょっと高そうな店だけど、だいじょうぶだろ。

僕はサイフに多めにお金を入れてきたのを確認して、僕はそう思った。