「だから、ほんとうは彼氏さんはうれしかったんだと思うぜ。考えてもみろ。風俗嬢が、彼女なんておかしいだろ」

若い男性がそう言うと、若い女性がはっとした表情になった。

ーーーーーー僕は、わからない。

「きっと彼氏さんも、別れを切り出せなかったんだと思うぜ。今まで色々お金の面で助けてもらっていたから、言いにくかったんだよ。要は、彼氏は彼女のことなんて金づる女としか見てなかったんだ。だから、強姦した男子大学生を復讐しなかった。彼氏じゃなく、代わりに父親が復讐した。マスコミの取材にも彼氏さんも応えてないし、ほんとうに好きだったら、普通取材を受けて今の想いとか相手に対する感情を言うだろ」

若い男性は自分の推測を、自信たっぷりに話す。

ーーーーーーたしかに一般論の見解では、そう判断するのが普通だろう。

「………」

けれど、風俗をやってるだけでなぜ、今の日本の社会からこれほどまでに批判的に見られるのかわからない僕は、ただただ考える表情を浮かべた。

「まぁ、俺たちには関係のない話題さ。風俗で働いている女は普通じゃないし、その彼氏も、彼女に風俗で働かせるなんて普通の考えじゃないわ」

軽い口調で言いながら、若い男性はとなりに座っていた彼女の白い手を握った。

ーーーーーーああ、幸せそうですね。

心の中でそう思いながら、僕は再びiPadの音量を上げた。