iPadを手に持ってリビングを降りた僕だが、そこには誰もいなかった。もう両親は会社に出社したのだろう、いつも見るバタバタとした朝の忙しい光景とはべつに、静かな朝が僕を迎えいれた。

ちゃぶ台には朝食の準備がされており、昼食代三千円も置かれていた。それと母親の置き手紙と見られる、白い紙が置かれていた。

用意されていた朝食の食パンの上にキャラメルソースをバターナイフで塗って、バターを少し乗せる。そして母親の置き手紙と思われる、白い紙に目をやる。

《夕方までには、帰ります。反省をしっかり書いて、もう二度と親を泣かすことはしないでください。昼食は、自分の好きな物を食べてください。母》

「チッ、うざぁ。てか、勝手に泣いてるのはそっちだろ。そもそも療育手帳を学校に持って行かせたから、こんなことになったんじゃないか!」

文句を言いながら僕は、母親の書いた白い紙をクシャクシャに丸めてゴミ箱に投げ捨てた。そして、朝食の食パンを食べた。

いつもならキャラメルソースの味とバターの味が絶妙にマッチしておいしく感じられるのに、今日は怒っているせいか、おいしく感じられなかった。