「今まで私も長いこと教師をやっておりますが、こんなハサミを投げる生徒は初めて見ました」

重い空気の中、担任の佐藤先生が口を開いた。

呆れたような表情を浮かべながら、太い首を傾けている。

「すいません、すいません」

母親が泣いて謝る。ピンク色のハンカチで涙を拭い、ペコペコ頭を下げる。

ーーーーーーうざぁ。てか、お前らのせいだからな。お前らが療育手帳を学校に持って行かせたから、こうなったんだからな。すべての原因は、お前らやしな。わかってんのか!

療育手帳を無理やり持って行かせた昨朝の両親とのやりとりを思い出して、僕は心の中で怒りをぶちまけた。

「まぁ、お母さんは落ち着いてください。お母さんが、悪いことをしたわけではありませんから」

そう言って佐藤先生が、ぎこちない笑みを浮かべて母親をなだめる。