「もう、泣きそうやんけ。さすがに、やり過ぎちゃうけ?」

「でも、やられてばっかりで情けない。男やなのに」

「泣いたら、あかんぞ。めんどくさくなるから」

周囲からの煽りは続いており、僕の苦手な空気だけが教室中に溶け合う。

ーーーーーーハサミを投げてやる。これだけ僕のことをいじめてるのだから、これぐらいのことをしたって全然問題ないはずだ。

そう思うとハサミを握る力に、さらに力が加わる。それと同時に、僕の右手が徐々に震える。

怒りで震えるているのか恐怖で震えるているのかわからなかったが、こいつだけは許せなかった。やり返したかった。やり返してもいいと思った。

「こんな物をいつまでも持っていたら、俺までお前と一一緒にされそうやわ。だから、返したるわ」

そう言いって不良生徒は、僕の頭にめがけて大切な療育手帳を投げた。

「………」

僕の頭に療育手帳がポンと当たり、冴えない自分の顔写真が写ってある状態でその場に落ちた。自分の顔写真に視線を落とすと、いつも以上に悲しそうに見えた。