「しんどいけど、お金は大事だから。それにいつかはみんな、働かないといけないんだよ」

「それはそうだけど」

彼女にそう言われると、僕は困った顔になった。


ーーーーーー数分後、僕たちはバス停に到着した。

「美希さんも、バス通学なんだね」

僕は緊張した面持ちで、美希さんに訊いた。

「はい、バス通学なんです。私の乗るバスまで少し時間あるし、栗原さんは帰ってもいいですよ」

美希はバスの時刻表を見ながら、僕にそう言った。

「いや、バスが来るまで一緒に待ってるよ。家に帰っても暇だし、やることないから」

僕は首を左右に振りながら、彼女にそう言った。

「暇なら、バイトでもしたらいいじゃないですか?やっぱり栗原さんは、お金持ちじゃないですか」

「美希さん、違うってば」

僕は苦笑いを浮かべながら、否定した。

「あ、バスが来た」

僕と話していたら、美希さんの乗るバスがバス停に向かって来た。

『バスが到着しました。ご乗車の方は、後ろのドアからお入りください』

前のドアが開いて、老人や若者が降りる姿が見える。

「ありがとう、栗原さん。じゃあ、また」

そう言って美希さんは、後ろのドアからバスに乗り込んだ。

「………」

僕は無言のまま、彼女が乗ったバスを軽く手を振って見送った。

「……帰るか」

彼女を見送った後、僕は家に帰った。