「では、出席を取ります。呼ばれたら、返事をしてください」

佐藤先生が左手で出席簿を取って、中身を開いた。そして、名前を呼ぶ。

「浅井雪さん」

「はい」

「井川夏君」

「はい」

「井上仁君」

「はい」

次々に名前を呼ばれ、生徒たちは返事をしていく。そして、あとひとり呼ばれたら僕が名前を呼ばれる順番まで回ってきた。



「木村裕也君」

「………」

「木村裕也君」

佐藤先生が、もう一度彼の名前を呼んだ。

「………」

木村裕也君は、お休みですね」

彼が休みのを確認して、佐藤先生が出席簿にボールペンで欠席と記入した。

「栗原未来君」

「はい」

自分の名前が呼ばれたので、僕は返事をした。

「佐伯美希さん」

「………」

「佐伯美希さん」

「は、はい」

数秒遅れて彼女の驚いた声が、真後ろから聞こえた。

彼女のフルネームをこのとき初めて知って、自分の体温が急上昇する。