ーーーーーー六年後ーーーーーー。


あれから、六年の時が流れた。

僕は高校卒業と同時に、地元の企業に就職した。

六年前屋根から飛び降りてケガしたところも、すっかりこの六年の間で完治した。

「未来。今日、結婚式なんでしょ。新婦さん、待たせる気?」

六年前と変わらず、母親が寝室に入って僕を起こす。母親は窓辺のカーテンを開けた後、僕の体をやさしく揺らしてリビングに降りた。

「結婚式か……」

母親がカーテンを開けたのと同時に、窓から僕の部屋に朝日が差し込んだ。眩い朝の太陽の日差しに、僕は目を細める。

就職しても変わらす実家暮らしをしているが、六年前みたいに親に対する嫌悪感はない。それは美希さんが僕に言った、『親を大切にしてね』という言葉が、今でも僕の心の中に残っているからだろう。

僕はふと彼女のことを思い出した後、左手薬指にはめている結婚指輪に視線を落とした。

地元の企業に就職し、僕はそこで出会った女性と結婚することになった。ほんとうは美希さんのことがあるから幸せにはなりたくなかったが、なんどかデートを重ねるうちに仕事の関係から恋愛関係に変わっていたのだ。