「美希さん、別れる前にひとつだけ言っておきたいことがあるんだ」

僕は涙をぬぐって、あのとき言えなかった告白をしようと思った。告白して、彼女と別れようと思った。

「美希さん。僕はずっと、君のことが………」

「未来さん。私の分まで、幸せになってね。さようなら、未来さん」

告白する前に、先に美希さんが僕に別れの言葉を言った。

ーーーーーー『さようなら』

それが、彼女が僕に口にした最後の言葉だった。美希さんが別れの言葉を言ったと同時に、僕の姿がその場から消えていく。

「ま、まって。美希さん。僕はずっと君のことが………」

そう言いながら、僕は彼女の方に思いっきり手を伸ばしたが、

ーーーーーーパチッ。

突然、僕の視界が開けた。ぼやけた視界の先に、白い天井が見える。

「未来、気がついたのね」

僕の伸ばした手を、誰かが握っていた。そちらの方に視線を向けると、号泣している母親の姿が見えた。