「うそだ」

僕はもう一度、同じ言葉を発した。

「うそじゃないよ」

美希さんはやんわりと、否定した。彼女の黒目がちの瞳が、儚く揺れている。

「じゃ、美希さんは?美希さんだって、誰かに助けてもらえているかもしれない」

「私は、ダメでした」

短く言い切った彼女の冷たい声音を聞いて、僕の胸が苦しくなった。

「それに母親も病気で亡くなっていたから、大学生の兄が見つけたときにはすでに私は死んでました」

悲しく笑いながら言う美希さんの瞳から、涙がぽろぽろと流れ出す。

美希さんと僕は、同じ死に方をした。でも、結末は違った。一生懸命努力し、仕事も勉強もがんばっていた美希さんは死んで、今までなにも努力をしてこなかった僕は生きた。