「いたぁ」

その不良男子生徒は拳を握りしめて、僕の右頬を殴ったのだ。僕はその衝撃に耐えられなくて、その場に倒れた。

「マジで、ケンカや!」

「先生呼ばないと、ヤバくないか?」

「いや、やめとけやめとけ。入学式早々、先生にこの状況を見つかった方がめんどくさくなるぞ」

「それもそやな。殴られた方、ガンバレ!」

やはりみんなには他人事なんだろう、僕が殴られた姿を見てもまるで関係ないような感じだ。

ーーーーーーまだ、だいじょうぶだ。療育手帳がみんなにバレたわけではないし、このまま我慢すれば時間が解決してくれるはずだ。

そう思ってポケットに入れた療育手帳を右手でこっそり確認した。ポケットに入れた療育手帳の感触が右手に伝わり、僕はほっと安心した。