「え、なになにいきなり?」

「なんかあったん?」

「もしかして、ケンカか?」

「入学式早々、いきなりケンカとかヤバくない?」

「いや、むしろ俺はそのケンカを見たい」

「はぁ 、なに言ってんねん。お前」

どうせみんな他人事なんだろう、周囲はどこか楽しそうだ。誰も止めようともせず、僕の嫌な空気を作る。

「………」

僕はなにごともなかったかのように、ひっくり返った自分の机を手で元に戻そうとした。

「おい、なんでこっちをジロジロ見てたのかを訊いてんの?無視すんなって」

しかし、その前に不良生徒に胸ぐらをつかまれた。背丈は僕よりも高く、見上げるような感じになる。

「べつに、見るぐらいいいじゃないですか?」

同級生なのになぜか敬語で話す、自分。恐怖のあまり、声が自然と震える。

中学生のころにいじめられていた苦い思い出が、再び僕の脳裏によみがえる。

ーーーーーー完全なフラッシュバックだ。先生、早く来い。なにやってんだよ。

心のそう強く念じる自分が、どこか情けなく感じた。

そのとき、僕の右頬に強い衝撃が走った。僕の視界がぐにゃりとゆがみ、鈍い痛みが残る。