「たしかに君の言ったとおり、悪口は書かれていたけど、これは私が書き込んだじゃないよ」

スマートフォンの液晶画面に視線を落として、松岡店長は眉を八の字にして低い声で言った。

「そ、そうですか………?」

僕は、抑揚のない声でそう答えた。

「だって私は彼女に好きな人がいたことなんか知らないし、彼女が高校生だったこともテレビの自殺したニュースで初めて知ったんだよ。仕事では一緒だったけれど、彼女のプライベートは全然知らなかったからね。それにこんな書き込みをしても、私になんの意味があるの?」

呆れた表情を浮かべながら、松岡店長はスマートフォンをポケットにしまった。

ーーーーーーたしかにそうだ。店長がネットに書き込んでも、意味がない。

「疑ってすみませんでした」

僕は、頭を深く下げて謝った。

「いや、いいよ。でも、これを書き込んだ人って、もっと身近な人だと思うんだけど………?」

「えっ!」

なにげなく口にした松岡店長の言葉を聞いて、僕の眉がピクリと動いた。

「いや、わからないけどね。でも、私はそう思うよ」

「身近な人………」

「あ、ごめん。お客様が来たから、話はこの辺で。いらっしゃいませ、どうぞ」

お客様が入って来たので、僕は店を出た。

「身近な人………」
松岡店長の言葉を聞いてから、妙に僕の胸がざわついた。それは、家に帰っても一緒だった。