四条河原町のバスで降りて、僕は美希さんが働いていた風俗店に向かった。
京都の街はすっかり春らしい気候になっており、日中のこの時間は暖かい。

「そんな匿名掲示板サイトに、書き込んでない。私は、知らない。同じ仕事仲間なら、なおさら私はネット上に書かない」

松岡店長に匿名掲示板サイトのことを訊くと、彼は険しい表情で否定した。その様子を見て、僕は口を真一文字に結んだ。

いつもにっこりと笑顔で接客してくれていたが、初めて見る険しい表情に僕は少し怖かった。待合室にお客さんはおらず、お客さんが来るまで僕の話には付き合ってくれるのことだ。

「じゃ、匿名掲示板をここで見てください。お願いします。美希さんの悪口がネット上でほんとうに書かれており、それが現実で彼女が自殺したんです。それは、まちがいないんです」

僕は頭を下げて、松岡店長にそうお願いした。