ーーーーーー美希さんが泣いてる?

そう思った僕は、背筋に冷たいものが走った。

「未来。お前も、このネットの掲示板サイト見てみろよ」

そう言いながら、僕のとなりにいたクラスメイトの男性が、スマートフォンの液晶画面を見せてきた。

僕の瞳に、インターネット上に最新のレス投稿の書き込みが映る。

『佐伯美希哀れな風俗嬢www木村裕也のことが好きらしいけど、絶対に無理www匿名』

二人だけの秘密にしていたはずの情報が、インターネットにリークされていた。美希さんに対する書き込みはその一件だったが、見ていた夢がどんどん現実化していく。そして、僕の顔が蒼白になる。

「美希さん。これは、僕が書き込んだじゃ………」

「美希さん、私の秘密をバラすなんて最低!」

夢で言われた言葉を、彼女に現実でも言われた。

それが、彼女が僕に口にした最後の言葉だなんてこのときは思ってもいなかった。

ーーーーーー最低ーーーーー。

「み、美希さん!」

泣きながら走って教室を出て行く美希さんの後を追おうとしたが、初めて見た彼女のあんな悲しそうな顔に僕は動けなかった。

ーーーーーー最低ーーーーーー。

僕の脳内で彼女に言われた言葉が、何度も反響する。

「美希さん、僕じゃないんだ」

僕はそう否定したが、美希さんは泣きながら走って学校を出て行った。