「未来さんがたくさん私に会いに来てくれたおかげて、お兄ちゃんの大学費も今月で足りるんです」

そう言って美希さんは、笑みを浮かべた。その顔は、ほんとうにうれしそうだった。

美希さんの言ったとおり、たしかに僕はよく店に行っていた。夜な夜な父親のサイフからお金を盗み、それで美希さんと会っていた。それを一年近く続けたせいか、予定よりも早く美希さんのお兄さんの大学費が貯まったらしい。

「ほんとうにありがとうございます、未来さん。私の秘密も守ってくれて」

風俗の仕事を辞めれることがよほどうれしかったのか、それとも、兄の大学費が貯まったことがうれしいのか、美希さんは言葉の途中で涙声になっていた。

「そしたら最後に今日、もう一度美希さんと店で会いたい」

ちらちらと空から雪が降る中、僕は顔を赤くしてそう言った。僕の口から、白い息が出る。