「君、スマートフォン持ってるよね。よかったら、僕とLINEでも交換してよ」

「てめぇ、いきなりアプローチなんかしてんじゃねぇよ」

「アプローチじゃねぇよ。ただ、声かけただけだろ」

僕の席の近くが急にさわがしくなり、むくりと体を起こした。

「………」

近くから声がすると思ってそちらに視線を向けたら、真後ろの席に美しい女性が複数の男子生徒に声をかけられていた。まるでその姿は、人気アイドルの握手会に参加する熱狂的なファンの光景にも近かった。

その子は本当に美しく、僕はその女性にひとめぼれをした。

ーーーーーードクッ。

自分の心臓の鼓動が、急に激しくなるのを感じた。今まで経験したこともない大きな心音に、思わず右手を左胸に置いた。まるで自分の心臓が、打楽器のようだ。