『2月28日《金》午後3時42分』



「あんなかわいい子が、風俗嬢だなんて」

「そんなに、金に困ってたのか?」

「アイドルから一転、ものすごく落ちぶれたなぁ」

「最初から、アイドルではないけどな」

「まぁ、それは言えてる」

「俺、佐伯のこと好きだったのに」

「うそつけ。好きになる理由がないやろ。あんな、女」

「未来さん、私の秘密をバラすなんて最低!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

そう叫んだ瞬間、僕の視界が開けた。

いつもの教室の光景が目に映って、僕の苦手な科目の数学の授業の最中で眠ってしまったようだ。

先生と周囲の生徒たちの視線が、一気に僕に集まる。

「だいじょうぶですか?」

「は、はい。だいじょうぶです。すみませんでした」

数学の男性教諭にそう言われて、僕は頭を下げた。

ーーーーーーまた、美希さんの死ぬ夢を見てしまった。

美希さんとデートしたとき彼女からおまじないのキスをしてもらったが、全然効果がない。彼女と会ってから、再び美希さんの死ぬ夢を見ている。

「はぁ」

僕は教室の窓側の席から、ぼんやりと外の景色を眺めた。

真っ赤に染まった秋の紅葉の季節は終わり、外はちらちらと雪が降っていた。紅葉も枯れ落ち、悲しそうな裸木が僕の目に映る。その裸木の枝にかすかな白い雪が積もっており、もう冬なんだなぁと思った。