「私と会ったから」

彼女は自分の胸に指を指して、さらりと言った。

「それは、関係ないよ。美希さん」

ぎこちない笑みを浮かべて、僕はそれを否定した。

彼女の言った可能性は十分考えられたが、僕はそれを信じたくなかった。まるで変えられない、未来の美希さんの死を見せられているようで辛かった。

「じゃあ、私の死ぬ夢じゃなくて、今日はいい夢が見られるように未来さんにおまじないをしますね」

そう言って美希さんは、やさしく微笑んだ。

「美希さん……」

美希さんが気を使ってくれたおかげて、僕の心も軽くなった。

いつもは、バスはひとりで乗って周囲のカップルに羨望感を抱いていたが、今はなにも感じなかった。

「デートか……」

待ち合わせの金閣寺から出会って、美希さんは今もずっと僕の手を握ってくれていた。

デートなんかしたことなかったけれど、デートってこんな気持ちなんだろうなぁと思った。