「なんでしょ?」

やさしい口調で訊く、佐伯さん。

「あ、あの〜。高校生の妹いませんか?僕の高校にも、同じ苗字の女性がいるんですが……?」

彼にそう訊ねたが、世の中に〝佐伯〟という苗字は多くいるから違うかなぁと思った。

「もしかして美希と同じクラスメイトの、栗原君かな?」

「は、はい。そうですけど」

彼が僕の知っていたことに驚き、目をパチパチした。

「美希が学校を休んでいる間、ずっと君のことを話していたんだ」

「そうなんですか……」

美希さんが家で僕のことを話していることに、不安とうれしさがあった。

「ちょっと待ってて。これ終わったら、君にお礼を言いたいから。外で、待っててくれるかな?」

「はい、わかりました」

彼にそう言われて、僕は店内を出て外で美希さんのお兄さんを待つことにした。