「……」

本に書いてあったことを暗記し、僕は店内から出ようとする。

「佐伯君。この本、そこに入れて」

その直後、美希さんと同じ苗字の人が、女性店員に呼ばれた。

「はい」

女性店員に呼ばれた佐伯さんが、低い声で返事をした。

「………」

僕は、その佐伯という男性店員に視線を向けた。二十代前半の大学生ぐらいだろうか、その人は若かった。

「美希さんのお兄さんだろうか……?」

彼女にお兄さんがいるって言っていたのを思い出して、僕は佐伯という男性に視線を向けた。

「あの、すいません」

「はい」

僕の呼びかけに、佐伯さんがこっちを振り向いた。左胸に佐伯と書かれた名札をしており、年齢はやっぱり二十二歳くらいに見えた。