「次、栗原さん」

「はい」

佐藤先生に名前を呼ばれ、僕は教卓に向かった。

「未来、数学の4を引けよ。俺は、5の窓際の席が取れたから」

裕也はうれしそうに、僕に数字の5が書かれた白い小さな神紙を見せた。

「わ、わかってるよ」

口ではそう言ったが、やっぱり僕の狙いは21しかなかった。

僕は教卓の前まで行って、手作り感満載のボックスの中に右手を入れた。ガサガサと紙がこすれる音がし、僕の心音が大きくなる。

僕はボックスの中から紙を一枚握って、そのまま右手を外に出した。僕の右手に、二つ折りにされた白い紙がしっかりと握られていた。

ーーーーーードクッ。

僕の左胸の鼓動が、一回大きくなった。

「はい、次の人」

次の人と入れ替わり、僕は自分の席ヘと戻った。

「未来、何番だった?」

僕が席に戻ると、裕也が興味深しげな顔をして訊いた。

「今、見るところ」

そう言って僕は、二つ折りにされた白い紙をめくった。ドキドキと、自分の心臓の鼓動が高鳴るのを感じる。

「……4だ」

白い紙を開けたと同時に、僕の瞳に数学の4が見えた。

ーーーーーーああ。また、美希さんと離れた。

「やったなぁ。また俺たち、一緒だな」

「そうだな、ははは」

裕也は笑みを浮かべてよろこんではいたが、僕は彼とは正反対の気持ちだった。

「美希さん………」

開いてる教室の窓の外から聞こえるツクツクボウシの鳴き声が、今の僕の気持ちを表現しているようだった。