京都市の住宅街にある、マンションの一室で彼女は深い悲しみに包まれていた。母親は最近失った今、学校にもしばらく姿を見せていない。

「お母さん。私、もうしんどいよ」

私は仏壇の前に飾ってある、母親の遺影に話しかけた。もちろん、返事は返ってくることはない。ただただ、やさしい笑みを浮かべている母親の遺影が仏壇に飾られている。

「しんどいなら、今日も休んでもいいよ。美希」

私の弱音を耳にしたのか、後ろからやさしい声がした。

「………」

振り向くと、六つ年上の来年社会人になる大学四回生の兄の姿が目に映った。

「俺も、バイト増やすし、これ以上妹にめいわくかけるわけにはいかないからな。大学の学費も後半分ぐらいだし、ここまで払ったら俺のバイトだけで十分やっていけるさ」

私の頭に軽くポンと右手を置いて、兄が顔をクシャッと笑った。

「………」

今、やさしくされると、泣きそうになる。それが精神的に弱ってると、余計に涙があふれる。