「君は、好きな人とかいるの?」

かなさんが、僕に視線を向けて訊いた。

ーーーーーードクッ。

僕の頭の中に、美希さんの姿が浮かび上がった。

「うん、いるよ」

僕は、正直に答えた。そう言ったとき、頬がかすかに赤くなった。

「そっか、いるんだ。好きな人、どんな人?」

「すごくやさしい人だよ」

僕は、彼女に抱いている感想を口にした。

「付き合ってるの、その人と?」

「ううん、ただの片想いってやつ」

僕は、美希さんと自分の関係性を静かな声でそう言った。

「そっか、片想いか」

そう言いながら、目を細めるかなさん。

「うまくいくといいね」

やさしい口調でそう言うかなさんだったが、僕は「夢の中ではうまくいってなかったけどね」と言った。

「夢?」

それを聞いて、かなさんが小首をかしげた。

「どんな夢なの」

「彼女の死ぬ夢を少し前まで見てたんだ」

僕は、悲しそうな声でそう言った。

「そうなんだ」

そう言ってかなさんが、眉を八の字にした。