「でも、その間に私の彼は亡くなり、父親は男子大学生を刺したの」

かなさんは悲しそうな声で、そんなことを言った。

「えっ!」

それを聞いた僕は、目を丸くして驚いた。

「うそでしょ……?」

驚いた顔をしたまま、僕は彼女に視線を向けて訊いた。

「ほんとうだよ。好きな彼、私を置いて先にいなくなってしまったんだ」

その言い方は、とてもさみしそうだった。

「どうして亡くなったの?」

僕は、小さな声で訊いた。

「彼氏は私にこれ以上めいわくかけたくなかったのが理由で、自分から死んだの」

「……」

彼女がそう言って、僕はまたなにも言えなくなった。

心臓をわしづかみされているような感覚に襲われ、僕は顔をゆがめた。