「その事故のせいで頭を強くぶつけ、脳に後遺症が残ったの」

「………」

彼女になんと言ったらいいかわからず、僕は口を閉じることしかできなかった。

「働いていた会社はやめ、彼は事故のせいで脳に障害が残ったの。そして、先の見えない入院生活がずっと続いたの」

かなさんの訴えるような瞳が、悲しそうに揺れる。

「………」

僕は、ただこの苦しい話を聞くことしかできない。なぐさめの言葉が見つからない。

「それでかなさんは、その彼氏さんの病院代を稼ぐために働き始めたのですか?」

少し低い声で、僕はかなさんに訊いた。

「そうです」

短く答えたかなさんの顔は、また悲しそうだった。

ーーーーーー美希さん。

美希さんも、兄の大学費の為に働いていると言っていた。

「クッ」

美希さんの言葉を思い出し、僕は下唇をかみしめた。