「うーん。出会ったばっかりなので、秘密です」

口元に人差し指をおいて、そう言ったかなさん。

「頼む、どうしても教えてほしんだ。お願い」

少し強引だったかもしれないが、僕は彼女にお願いした。

「どうして?」

僕の様子を見て、彼女は心配そうにそう訊ねた。

「インターネットの掲示板に、君のことが書かれていたんだ。それを見て、僕は今日店にやってきたんだ。その書き込みが、ほんとうかうそかわからないけれど………」

「………」

かなさんはなにも言わなかったけれど、驚かないということはそのサイトを知ってるようだった。

「悪口ばっかり書き込みされていたけれど、それがほんとうだと信じたくないんだ」

「そうなんだ」

僕の言葉を聞いて、かなさんは目を細めた。

「どんなことが、書かれていたの?」

「………」

その彼女の問いに、僕は答えられなかった。

「もしかして、男子大学生に強姦された女子大生とか?」

「えっ!」

その言葉を聞いて、僕の思考が数秒間停止した。

「それは………」

「いいんですよ、もう有名な事件ですから」

そう明るい口調で言ったが、彼女の表情はとても悲しそうだった。

ーーーーーーやはり、掲示板の書き込みはほんとうなのか………?

僕は、奥歯をギリギリと噛みしめた。