「お待たせしました、どうぞ」

三十分ぐらい時間が過ぎて、僕が松岡店長に呼ばれた。

「待合室を出て、一番奥の部屋になります」

僕は松岡店長に言われたとおり、一番奥の部屋のドアを開けた。

「こんにちは」

ドアを開けた瞬間、僕より少し背の高い化粧をした女性が見えた。

二十二歳ぐらいの年齢で、ニュースで報道していたとおり大学生ぐらいの年齢だ。

「………」

僕は、怪訝そうに坂口かなさんを見た。

「どうしたの?」

なめらかな流れるような声。スマートな体型に、大人らしいブラウン系の髪色。切れ長の目に、桜色の薄い唇。そして、左手の薬指に指輪がはめらていた。

ーーーーーーほんとうに、この女性なんだろうか?

僕は、さらに怪訝そうに彼女を見た。

「坂口かなです。よろしく」

「よろしく。ところでその指輪、誰か大切な人でもいるの?」

僕は、彼女の薬指を指して訊いた。

「え、これですか?」

かなさんは少し困った様子で、左手薬指に視線を落とした。