『8月1日《火》午後12時18分』



街の気温も、ぐんぐん上がっていく。四十度近くまで上がるとネット掲示板に書いてあったが、今がそれぐらいの気温だと思う。

「暑い」

バスが四条河原町に到着し、僕はここで降りた。

バスから降りた瞬間、むっとした暑さが僕を襲った。じめじめとした汗が額から流れ、それが体中にまとわりつく。

せみの鳴き声はあいかわらずうるさく聞こえ、余計に暑さが増す。

「暑いなぁ」

そううめいた僕は、額から流れた汗を手の甲でぬぐった。

この暑さのせいだろうか、日傘をさしている女性が多く見られた。

「映画でも観に行くか?」

「いいけど、暑いからその前に喫茶店で飲み物でも飲んでからね」

「わかった」

木屋町通りに向かって歩いていると、若い高校生ぐらいのカップルとすれ違った。デートでもしているのだろうか、そんな楽しそうな話が僕の耳に聞こえた。

ーーーーーーほんとうに、幸せそうだ。

「美希さん………」

こんな幸せそうなカップルを見ると、自分も美希さんと幸せになりたいと思う。僕もこんな風に、外で美希さんとデートというものをしてみたいと思う。そんな風に、思ってしまう。

「いいなぁ」

そんな感情と比例するかのように、妬みや嫉妬心が込み上がる。

僕と美希さんの関係は、客と仕事。決して、いい関係とは言えない。

「はぁ」

ため息とともに、僕は天を仰いだ。

果てしない青空がどこまでも広がっていて、ただ夏の強い日差しが降り注いでいる。