「………」

僕の頭の中に、少し前にバスの中で話していた若いカップルの女性の言葉がよみがえる。

『でも、あの風俗で働いていた女子大生、かわいそうだよね』

ーーーーー確かにそうだ。

僕はiPadを閉じ、クーラーを消した。そしてリビングに駆け下り、タンスから夏服を取り出してそれに着替えた。

白い無地のTシャツと青色のハーフパンツを履いて、メンズの肩掛けカバンとサイフを持って家を出た。

「暑い」

やはり外は、うだるような暑さが続いていた。

今日は天気予報を見ていなかったが、あのインターネットの掲示板サイトの通り、四十度近くまで上がりそうだ。

「この前まで、春だったのに……」

僕は額に浮かんだ汗を右手の甲で拭い、カバンに入れていたペットボトルのジュースをゴクゴクと飲んだ。口の中に僕の好きな冷えた炭酸飲料水が駆け抜け、カラカラだった口が一瞬で潤う。