「未来も、言われなくてもわかるやろ。最近、ニュースになってるやろ。女子大生の事件」

「………」

それを聞いて、僕は眉をピクリと動かした。

「そういう仕事をしてるから、事件に遭うねん。普通の女性がやるような仕事をしてないから、そんなことになるんや。だから、未来もふらふら夜に出かけてると危ない目に遭うかもしれないぞ」

「それは、関係ないだろ」

初めて、父親に反抗した。今まで我慢してきた感情が、一気に爆発した。

「そもそも、普通の女性とそうじゃない女性の違いってなんだよ?はっきりした定義もないのに、差別するなよ」

そう言った僕は、泣いていた。泣きながら叫び、二階の自分の寝室に駆け上がった。

「クソ、クソ」

こもった声が、僕の部屋に聞こえる。リビングから両親に呼ばれていたが、僕はそれ以降自分の部屋から出ることはなかった。

「……」
iPadカバーを開いて、ディスプレイが僕の目に映る。ダウンロードしている検索アプリをタッチして、美希さんが働いているお店の名前をキーボードで打ち込む。

彼女のお店の公式サイトがディスプレイに映り、僕はそれをタッチする。システム。イベント。日記。見やすいように宣伝された、公式ホームページ。僕は、日記をタッチする。

《二人だけの秘密さんへ。今日も、君と会えてうれしかったよ。そして私の運命から、救ってくれることを信じてます》

《美希さん……》

僕は、彼女の名前を口にした。